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比呂子
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ごめんください。比呂子です。おじゃましまーす。
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おば |
はい。まあまあ、皆さん、おそろいでようお越しやした。おつかれさんどす。
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比呂子 |
ご紹介します。おばです。
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おば |
お初に、お目にかかります。
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比呂子 |
おばさま。親友の加山明子さん。
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明子 |
はじめまして、おことばに甘えてまいりました。比呂子さんが京都から東京に引っ
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越して来られてからのなかよしです。
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おば |
おこしやす。 |
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比呂子 |
それから、こちらは・・・。 |
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マイク |
グリーンと申します。はじめまして。3年前にイギリスから来て、今、東京の大学で |
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日本文学の勉強をしております。 |
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おば |
そうどすか。このごろの外人さんは、よう勉強おしやして、じょうずに日本語を話さ |
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はりますなあ。 |
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マイク |
ありがとうございます。京都にはもう何回も来ておりますが、秋の京都は初めて |
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です。今回はこちらで二晩もお世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。 |
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比呂子 |
マイクさんは、今わたしが働いている会社で、アルバイトで英会話の先生もしている |
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のよ。でも、本業は三島由紀夫についての研究で、あしたも一人で金閣寺を見に行く |
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つもりなんですって。ええと、もう一人、今日の運転手の山本五郎さん。彼には |
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今回の就職のお世話になったんです。 |
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五郎 |
山本です。よろしく。本業はポケットコーダーのセールスマンです。比呂子さんとは、 |
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けんか友達です。今日もずっと車の中でやってきました。 |
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比呂子 |
新米の運転手に道案内をするのは大変だったわ。 |
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おば |
東京からお一人で、ずっと運転しておいやしたんどすか。そうどすか、お食事の前 |
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に、お風呂に入らはって、のんびりしておくれやす。
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五郎 |
ありがとうございます。そうさせていただきます。 |
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おば |
ほんまに、ええ日にきてくれはりました。あさっては時代祭どすよって、午後から、 |
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お行きやしたらよろしおす。特別招待の観覧席の切符が4枚用意してありますよって。 |
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五郎 |
お気遣いいただきまして、ありがとうございます。 |
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マイク |
時代祭はテレビの中継で、見たこと(が)ありますが、本物は初めてです。 |
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おば |
そうどすか。去年の時代祭は、天皇さんのご容体がおもわしゅうない時で、中止に |
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なってしもうたんどすえ。 |
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比呂子 |
そうだったわね。・・・あしたのお天気はどうかしら。 |
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おば |
天気予報では、「晴れ、時々くもり」て、ゆうてました。今年も40万以上の人出が |
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あるそうどす。さあさ、どうぞ、どうぞ。 こっちへ入っておくれやす。主人はまだ |
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帰ってはらへんけど、晩ごはんまでには帰らはるはずどす。おばあちゃんは、 |
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今しがた、犬の散歩に出て行かはりました。今年、80才で、まだ、からだはしゃん |
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しゃんしてはるけど、耳がちょっと遠おますよって、大きいお声でものゆうたげとくれ |
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やす。・・・あ、あっちから帰って来はりました。あーあ、ウォークマンして、ダックス |
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フンドに引っぱられてはりますわ。 |
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比呂子 |
ウフフ・・・、とってもお元気そうですね。2年前にお会いした時より、お元気 |
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そうよ。 ちょっと小さくなられたように見えるけど。 |
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全員 |
こんにちは。おじゃましています。 |
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祖母 |
まあ、まあ、ようお越しやしたなあ。ハウ、ドー、ユー、ドー。 |
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比呂子 |
はい。これは、東京のおみやげです。おばあちゃまの大好きな「とらや」のようかん |
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です。母から預かって来ました。 |
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祖母 |
おおきに、おおきに。正之(まさゆき)は東京で元気にしてはりますやろか。 |
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比呂子 |
はい、みんな元気です。 |
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祖母 |
比呂ちゃんも今年から、就職しはって、電話で英語を教えてはるて、聞きました |
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けど、どうしてはりますか。 |
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比呂子 |
えっ・・・?! |
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おば |
おばあちゃん、これが、比呂ちゃんどすがな。 |
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祖母 |
あー、あー、そうどすか。比呂ちゃんも道子によう似てきはりましたな。若い時の道子 |
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にそっくりにならはって・・・。さあ、はよ奥へ、はいっとくれやす。 |
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