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比呂子
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おつかれさま、五郎さん、もうすぐ前方に東寺の五重の塔の先が見えてきて、それで |
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京都の町中に入ってきたことになるんだけど・・・。 |
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五郎 |
いよいよ京都か。京都東インターで名神を出そこなった時は、どうなることかと心配 |
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したよ。 |
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比呂子 |
わたしも。でも、京都南インターチェンジで出たもんだから、おかげさまで京都観光を |
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しながら、
おばのうちへ、たどりつけそうよ。・・・間もなく東寺が見えてくる |
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から、その東寺の手前を右に曲がって・・・、そして二つ目の信号を左折。 |
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五郎 |
あ、見えてきた。あれかな? 東寺の五重の塔は。 |
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比呂子 |
そう、そう。あの手前の道、九条通りを右にお曲がりください。
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五郎 |
はい、かしこまりました。
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比呂子 |
それから、二つ目の信号を左。そうするとそれが堀川通りだから、それをまっすぐ
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五条通りまで突っ走って、五条通りを右折・・・、それから・・・ |
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五郎 |
そんなに一度に言われても困るよ。京都を運転するの初めてなんだから。 |
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比呂子 |
ごめんなさい。とにかくこの堀川通りを突っ走って・・・。 |
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五郎 |
突っ走りたくてもこんなに混んできたから、突っ走れやしないよ。夕方のラッシュ |
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アワーにかかってしまったから。 |
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比呂子 |
本当に混んできたわね。まあ、無事に平安の都にたどりついたんだから、のんびり |
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運転で観光気分を味わいましょう。 |
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五郎 |
うん。京都は修学旅行で一度来たきりだし、あの時はかっぱエビせんを食べながら、 |
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観光バスにゆられていたことしか覚えていないんだから。 |
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比呂子
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今、横切っている通りが七条通りでーす。次の大きい交差点が五条で、そこを右に |
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曲がってくださーい。・・・さあ、早めに右折レーンに入らないと。 |
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五郎 |
これだね。ここを右に曲がってと。やれやれ、右折は一苦労だね。 |
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比呂子 |
それから、この地図によると、一つ、二つ、三つ目の大きい交差点が五条河原町です。 |
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五郎 |
その交差点を右? 左? |
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比呂子 |
そこをまっすぐ。 |
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五郎 |
はい、はい。ここをこのまま、まっすぐ行ってと。 |
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比呂子 |
そして五条大橋を渡って・・・この鴨川沿いの一帯は、昔、オバケの出そうなススキ |
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が原だったんですって。 |
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五郎 |
オバケより、もう少し歴史的な話にしてくれよ。いにしえの都なんだから。 |
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比呂子 |
はい、はい。〜これがかの有名な五条大橋、今を去る800年以上も昔、牛若丸と弁慶が |
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この橋の上で戦ったと言われております。ここで皆様おなじみの牛若丸と弁慶の歌を |
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お聞きいただきます。ご存知の方はどうぞご一緒にお歌いください。 |
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〜京の五条の橋の上、大の男の弁慶が、長いなぎなたふりあげて、牛若めがけて切り |
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かかる、 |
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五郎 |
〜牛若丸は飛び退いて、タンタタ、タタタタ、タララララー |
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ガイドさん、もう少しおとなの歌を歌ってください。例えば「女ひとり」とか。
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比呂子 |
はい。かしこまりました。 |
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〜京都、大原、三千院 恋につかれた女が ひとり |
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五郎 |
あれ? うしろの二人いやに静かだね。 |
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比呂子 |
あ、あら、いい声のガイドを無視して、二人とも寝ているみたい。あ、次の大きい |
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信号を左に曲がって、・・・曲がらずにまっすぐ行けば山科で、清水寺もこのすぐ |
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近くよ。 |
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五郎 |
で、曲がるのかい? 曲がらないのかい? |
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比呂子 |
曲がりまーす。曲がってください。・・・それから、この東山通りをしばらく |
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行くと・・・ |
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五郎 |
しばらくって、何キロぐらい? |
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比呂子 |
交差点の数で三つぐらいかしら。 |
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五郎 |
ぐらいでは困るよ。 |
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比呂子 |
このへんはよく知っているからだいじょうぶよ。右に八坂神社、円山公園知恩院に |
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平安神宮・・・。それから左側に熊野神社、大学病院、そして右側が京都大学。受験生
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あこがれの時計台はこの一角にあるのよ。 |
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五郎 |
ふうーん。よく知っているんだね。 |
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比呂子 |
ええ、父が東京に転勤になるまでだから、小学校五年生の秋まで、ずっと京都に住ん |
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でいたんだから当然よ。じゃ、つぎの百万辺の交差点を右に曲がってください。 |
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五郎 |
オーケー。・・・名古屋からノンストップで4時間も運転し続けてきたから、さすがの |
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僕も疲れたよ。どこかで車を降りてひとやすみしようよ。 |
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比呂子
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じゃ、銀閣寺の近くの喫茶店にでも入りましょう。ここから2分よ。まっすぐ行って、 |
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左側。ブリティッシュ・カウンシルのそばで・・・ |
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五郎 |
ブリティッシュ・カウンシル? |
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比呂子 |
ええ。 英国文化センターともよばれていて、まじめ学生や関西の文化人が英国の |
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情報を得たり、それから、クイーンズ・イングリッシュを勉強したり、英国かぶれの |
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人たちがカルチャーするところ。 |
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五郎 |
ふうーん。でも、さしあたり、カルチャーするまえに、腹ごしらえをしなきゃ。 |
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ハングリーでは、想像力も湧かないからね。 |
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比呂子
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それもそうね。あ、喫茶店が見えてきた。左側の、ほら、クリーム色の建物入り口の |
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ドアのところにUCC
COFFEEって、看板が出てるところ。 |
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五郎
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了解。 |
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