第６章　ダイアログ　日本語スクリプト文法索引
三島由紀夫の人生観

場面：会社の昼休みにマイクが五郎に話しかける。

  　
マイク
 五郎さん、最近、運転免許を取って車を買ったそうですね。
  　
五郎 ええ、買いました。
  　
マイク 何を買ったんですか。
  　
五郎 この近くの中古車センターへ行って、いろいろ物色したんですが、結局ホンダの
  シビックにしました。
  　
マイク 調子はどうですか。
  　
五郎 最高です。でも、いろいろ高くつきました。車は少し値切って８６万円でしたが、
  その他に税金や保険やらで・・・・全部で100万円を越えました。
  　
マイク そうですか。私も一台欲しいのですが、なかなか手が届きません。イギリス
  では、兄から譲り受けた真っ赤なMGのロードスター、１９６７年型に乗っていま
  したが、日本に来る前に、手放してしまいました。
  　
五郎 ええっ？　もったいないですね。MGのコンバーチブルは、カー･マガジンで写真を
  見たことがあります。クロムのバンバーとタイヤのスポークが独特のボディー・
  ラインに、マッチして、まぶしいような車でしたよ。
  　
マイク 五郎さんは、車に詳しいんですね。
  　
五郎 ええ。僕はこう見えても、ヨーロッパのハイ・パフォーマンス・カーの専門家なん
  です。雑誌から得た知識ばかりだけど。
  　
マイク それじゃ、いつかヨーロッパに行って本物に出会うことですね。
  　
五郎 そうですね。そうしたいですね。・・・マイクさんの日本滞在はいつまでですか。
  　
マイク 今年の１２月中ごろまでです。１２月末でビザが切れますから。
  　
五郎 そうですか。日本はどうですか。住みやすいですか。
  　
マイク はい、気に入っています。が、１２月でちょうど３年になりますから、そろそろ
  国に帰って今後の方針を決めなければなりません。今後の方針としては今、
  書いている論文を１１月中に書きあげて、１２月に３週間かけて四国、九州などを
  まわるつもりです。
  　
五郎 ふーん。どんなルートを計画していますか。
  　
マイク まだ、はっきり決めていませんが、まず、新幹線で神戸まで行き、神戸からフェリー
  で高知まで行き、四国八十八ヵ所の内、５、６ヵ所、バスで巡礼して、宇和島から
  またフェリーで別府まで行って、・・・それから、バスで「やまなみハイウェー」を
  通って、九州を横断し、多分その後、長崎で、２、３日調べものをしてから・・・、
 

あとは、飛行機で東京に舞い戻る予定です。
  　
五郎 へえー、新幹線、船、バス、飛行機と変化に富んで楽しいですね。それはそうと、
  マイクさん、今、大学での研究課題は何ですか。　
  　
マイク 「三島由紀夫の人生観」です。彼の考え方を日本的ととるか西洋的ととるかが、
  その考察の焦点となっています。
  　
五郎 おもしろそうですね。ぜひ読ませてもらいたいんですが、残念ながら英語が苦手なの
  で・・・。
  　
マイク いいえ、だいじょうぶです。　日本語で書いていますから。
  　
五郎 へえー。そうですか。
  　
マイク まず、日本で出版されている文芸雑誌に投稿するつもりです。日本の現代文学の研究
  者や学生、そして三島由紀夫に興味のある一般の人達にも読んでもらえればいいなと
  思っています。別刷りができてきたら、五郎さんにも一部お送りします。
  　
五郎 ええ。ぜひ、送ってください。でも、三島の作品が西洋的とは知らなかったなあ。
  　
マイク 三島は、「仮面の告白」の中で、少年期に、死を扱った西洋の絵画を見て、異常な
  ほど興味を持ち、興奮したと書いています。
  　
五郎 んー。そう言えば、三島の作品とウッディー・アレンの映画の雰囲気が似ている
  って、雑誌で読んだことがあります。　高校時代に、夏休みの宿題で「金閣寺」を
  読んで、感想文を書かされたなあ。ところで、ね、マイクさん、せっかく新しい車を
  買ったんだから、一緒にドライブに行きませんか。比呂子さんもさそって、週末に
  三人で、どこかへ行きたいんですけど。
  　
マイク それは大賛成です。
  　
五郎 じゃ、決まり。あとで、比呂子さんと相談しておきます。